20180130

尊敬する人とお茶をした。

 

出だしは最悪だった。起きて時計を見ると約束の時間から30分経っていた。「タバコ屋の前にいます」というメッセージと不在着信が一件。やばい。最悪だ。折り返し電話するもつながらず、寝坊した事とあと30分で着く事だけ伝える。服だけ着替えて家を出た。本当はシャワーを浴びたかったし化粧もちゃんとしたかったけど、人を待たせている身分でそんな事していられない。

人との待ち合わせに寝坊するなんて何年ぶりだろう。それがなぜ今日だったのだろう。忙しくてなかなか時間が取れない社会人の1時間を無駄にしてしまった。悔しい。情けない。高校生ぶりに全力で走った。すぐに息が切れた。心臓が痛い。自分の体力の無さを呪った。

 

約一年ぶりに会った彼は相変わらずだった。息切れしている私を見て嬉しそうにニコニコしていた。仏かよ。

彼は前のバイト先の社員で、何度か個人的に相談にのってもらった事もあった。私がバイトを辞めたらもう二度と会う事はないだろうと思いながら、「またお茶でもしましょう」なんて社交辞令を交わした。はずだった。ところが今年の年明け、「あけましておめでとう」と彼の方からメッセージが送られてきた。まず私のようなただのアルバイトの存在を覚えている事に驚きだった。そして「またお茶でもしましょう」という例のセリフ。ああこれでやり取りも終わりかと思った矢先、「いつ空いてる?」という問い。どうやら彼にとっては社交辞令ではなかったらしい。

 

私はまた会える事が純粋に嬉しかった。バイトしていた時からずっと彼の事が大好きだった。もちろん恋愛的な意味ではない。簡易的な言葉で表現すれば「憧れ」とでも言うのだろうか。とにかく私は彼のような人間になりたいと思った。

彼は頭が良い。知識が豊富だ。社長の次に偉い役職に就いていて、仕事が忙しく自由な時間が少ないにも関わらず、合間の時間で本を読んだり講演を聞きに行ったりする。知識を増やすことをやめない。さらにはただの大学生アルバイトのためだけに時間を割いて、相談を聞き、いくつかの解決案まで提示してくれたりもする。

私は彼と話すのが好きだ。いつも新しい知識を教えてくれる。別の角度からのものの見方を教えてくれる。難しい内容は易しく噛み砕いて丁寧に、且つ論理的に説明してくれる。どんなにくだらない話題でも必ず学びがあった。

 

私が彼において一番尊敬しているのは、「感情と事実をきちんと分けて行動できる」ところだ。どうしたって人間は自分の感情に飲み込まれやすい。はっきり言って感情は邪魔になる事の方が多い。分かっていても感情を無視する事は難しい。しかし彼はそれをあっさりとやってのけるのだ。

そのせいか、彼にはサイコパス的な空気が漂っているように感じる事が多々ある。クレイジーな発言も多い。悪く言えば気持ち悪い変態だ。そういうところが好きなのだ。

 

別れた後、感謝と謝罪を述べたメッセージを送ると、「またごはんにでも行きましょう」と返ってきた。彼の事だからきっとこれも社交辞令で終わらせないんだろうなと思うと希望が湧いた。