20171014〜20171015

男の家に一人で泊まりに行った。

 

この日は高校の頃の男友達であるAとB(仮名)と私の三人で飲みに行く約束をしていた。Aが住んでいる土地で飲むことになっていたので、Bと私はそのままAの家に泊めてもらう予定だった。

しかし、Bが翌日の予定の都合で帰ることになった。結果、私一人でAの家に泊まった。

私も帰るか迷ったが、前回三人でごはんを食べに行った時、1時間半もかけて夜に一人で帰るのがかなり面倒だった。泊まる準備もしてきたし、事前に相談していた女友達にも「大丈夫でしょ」と言われていたので、泊まっていくことに決めた。

 

友達とは言っても、Aは10人くらいの仲良しグループの中にいた1人なだけで、個人的に話したことはあまりなく、正直仲が良いとは言えない相手だった。女子大に通っている私にとって男子大学生というだけで慣れていないのに、さらにあまり親しくない相手だったので、最初は人見知りしてしまうほどだった。幸い相手が話し上手だったので、会話には困らなかった。

 

私は交友関係がかなり閉鎖的なので、大学生に関する知識が偏っていることを自覚しているのだが、一人暮らしをしている男の家に女が泊まりに行くというのは一般的にはどうなのだろうか。そういうことなのだろうか。Aとあまり話したことがないゆえに彼がどういう考えをしているのかもさっぱり読めず、一応どっちに転んでも「まあそうだよな」と思うことに決めていた。

 

結論から言うと、何もなかった。Aはベッドで寝て、私は隣の部屋のソファに寝かせてもらった。(Aは大学生のくせに2DKの部屋に一人暮らししている。洒落臭い。)「寝かせてもらった」と言っても、2時に消灯してからなかなか眠れず、コンビニに行ったり(知らない街で深夜のコンビニへ行くのはかなりパラレルワールド感があった。雨が降っていて、住宅街なので人が誰もいなかった。)読書をしたり、結局私が眠りについたのは6時頃だった。

かなり眠りが浅かったので、8時には起きた。前日飲酒したこともありかなり喉が渇いており、お茶を飲んでいるとAも起きてきた。ナチュラルにソファの隣に座ってきて、一緒に毛布にくるまった。

 

Aは特別顔が良いわけではないが、女の子にモテる。少し一緒にいるだけでモテるのが分かる。二人でいる時はもちろん、Bがいる時も女の子である私に対する気遣いが素晴らしかった。もちろん男女平等に優しいのは確かだが、「女の子専用の気遣い」というのを目の当たりにした感じがした。

例えば、お会計の時。下戸である私はAやBの半分くらいしか飲めなかったので、2万円のうち5千円だけ出したのだが、「いやそんなにいらないよ。全然飲んでなかったじゃん」と、頑なに返金したがったり。(私も頑固なので受け取らなかったが。)店から駅まで歩いていた時。Bの終電がかなりギリギリだったので急ぎ足で歩いていたのだが、「速くない?大丈夫?」と声をかけてくれたり。(彼らは二人とも身長180センチ越えなので一歩が大きい。)駅からAの家まで歩いたとき。小雨が降ってきたが、私もAも傘を持っていなかったのでそのまま歩いていると、「雨大丈夫?」と聞いてくれたり。

私が男慣れしていないせいもあるのかもしれないけど、こういう些細なことでもすごく新鮮で、なんというか感動した。あ、女の子扱いされてるな、と感じた。もちろん悪い気はしなかった。

 

私が思うもう一つのAのモテ要素は、距離の詰め方。Aの家に帰宅して二人で話していたとき、動画を見るタイミングで、別に移動しなくても一緒に見られる場所にいたのにも関わらず、わざわざ私の隣に移動して寄ってきたり。指の話になったので、「ペンだこがいつまでたってもなくならない」という話を私がしたら、「どれ?」と言いながら触れてきたり。

極め付けは翌朝。起きてから二人でソファに座ってしばらくすると、Aが隣で寝始めた。私はその間に化粧をしたり読書をしたりして過ごしたが、だんだん眠くなってきたので、Aの隣に横になった。(この時点で私に非があると言えばそれは本当にそうなのだが、他に居場所がなかったのも事実である。)

目は瞑っていたが眠れず、そのうちAが起きた気配がした。私が寝ていることを目視した上で、こちらに寄って再び寝始めた。(見ていないので実際のところは分からないが、明らかに私の近くで吐息を感じた。)寝息の感じからして、たぶん狸寝入りだったと思う。(後に「よく眠れた?」と聞いたら「うん」と答えていたが。)

あまりよく知らない男といわゆる添い寝状態になり、かなり緊張した。ただでさえ速い鼓動がさらに速くなった。暑くなって途中で毛布から出た。

 

私が高校の頃Aとあまり仲良くなかったのは、Aには私と似たところがあると感じたからだ。なんというか、小賢しい。自分を映して見ているような気がして、なんとなく好きになれなかった。

たぶん、このとき私が起きていたことにAは気付いていたと思う。知っていた上で、近寄ってきた。でも、自分からは絶対に手を出さない。あくまでもこちらのアクションを待つ。待たれているのが分かる。でも、私も何もしない。向こうが待っているのが分かるから。

最後に少しだけ腕や髪を触られた。

 

このとき私が自分の欲求のまま動いていたら、たぶんセックスしていたと思う。理性が勝ってくれて本当に良かったと今になって心底思う。

私自身、Aとセックスをしてもセフレになっても全く構わないという心境だった。しかし、大きな問題がある。両手で数えられるほど少ない私の友達のうち二人が昔Aのことを好きだった。Aとやってしまっていたら私は大切な友達を二人も同時に失っていたことになる。危ない。

帰るとき、何もしてないのにセフレ感が出ていて面白かった。部屋着で寝癖がついたままの男に玄関で見送られる光景。

 

Aの中で私は「押せばヤれそうな都合の良い女」に位置付けられたかもしれない。まあ彼氏を作る気はないけどセフレなら何人かいてもいいかな、と思っている私は本当にその通りの女なので別に良い。

ただ、「こいつ俺のこと好きなのかも?」と思われるのだけはごめんだ。好きではない。断じて。そこだけは譲れない。

 

次に同じようなシチュエーションになったら絶対にヤってしまうと思うので、今後はやめたい。